言葉はひとたび石に刻んでしまえば
ゆるぎない事実として記憶を象る
あとひとつの言葉を彫れば完成するそれを彼に贈ろうとした。
私は己の浅はかさに血の気が引いていく音を聞いた。
しかし、彼は違う音を聴いていたようだった。
「鳥の群れだね」
木漏れ日の向こうを見透かそうとするように顔を上げて目を細め、彼は言った。
「見えないけど、聞こえるよ。羽根の音が」
私は意識から遠のきかけていた外界の音を拾おうと懸命に耳を澄ましたが、葉ずれの音が幾重にも重なり合った先に羽ばたきの音を探り当てることは叶わなかった。
「魂は身体を離れると目には見えない鳥になって、西よりもまだ西の、すべての終わりと始まりのある国へ飛んでいくって言い伝えがあるのを、知っている?」
私は知らないと答え、何故終わりと始まりが一緒に在るのかを尋ねた。
「そこには時間がないからさ」
彼はそう答え、私を責めることもなく手を差し伸べてくれた。
「さ、行こう。方角は西、鳥たちと一緒だ」
ゆるぎない事実として記憶を象る
あとひとつの言葉を彫れば完成するそれを彼に贈ろうとした。
私は己の浅はかさに血の気が引いていく音を聞いた。
しかし、彼は違う音を聴いていたようだった。
「鳥の群れだね」
木漏れ日の向こうを見透かそうとするように顔を上げて目を細め、彼は言った。
「見えないけど、聞こえるよ。羽根の音が」
私は意識から遠のきかけていた外界の音を拾おうと懸命に耳を澄ましたが、葉ずれの音が幾重にも重なり合った先に羽ばたきの音を探り当てることは叶わなかった。
「魂は身体を離れると目には見えない鳥になって、西よりもまだ西の、すべての終わりと始まりのある国へ飛んでいくって言い伝えがあるのを、知っている?」
私は知らないと答え、何故終わりと始まりが一緒に在るのかを尋ねた。
「そこには時間がないからさ」
彼はそう答え、私を責めることもなく手を差し伸べてくれた。
「さ、行こう。方角は西、鳥たちと一緒だ」